社会で生きていく基礎力を養う旅教育とは?

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社会で生きていく基礎力を養う旅教育
島の過疎化・高齢化を救い、子ども達の力を育む旅教育とは?

本日のKeyPerson 旅作家で株式会社officeひるねこの小林希さん。
世界中を旅してきた小林さんだからこそ作ることの出来た旅教育のビジョンを伺ってきました。

【聞き手】当協会理事 北本貴子



北本:今日はよろしくお願いします。

小林:よろしくお願いします。

北本:小林さんはいま旅作家として活躍されていて、海外や国内を旅しているんですよね。

小林:はい、前職を退職してからは一人で色んな国に行きました。

北本:その「色んな国」というのも、よく日本人が旅行に行く馴染みのある国から「え!そんな国もひとりで行ったの?」という国まで様々ですよね。
小林さんの本は、私も同い歳の同じ女性だからこそ共感できる感情もたくさんあって、気持ちの良い読後感に浸りました。
今も作家として活動していらっしゃるんですよね?


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小林:はい、執筆は今もしています。作家としての活動も続ける中で、昨年末に会社を立ち上げ旅教育の事業を開始しました。まだ一般には告知をしていないので、利用者はまだいませんが。

北本:今日はその「旅教育」について詳しく伺いたいなと思っています。
どうして旅教育というものをやろうと思ったのですか?

小林:いわゆる「旅行」ではない「旅」というものは、子ども達にとって、とても良い体験になります。プランニング能力や問題解決能力をはじめ、行動力、判断力、決断力、危機回避能力・・いろんな力を育むことが出来ます。
それに旅を通して得る達成感は自分が思っている以上に成長させてくれるものです。これからの社会で生きていくための基礎力を養う力が「旅」にはあります。

北本:ツアーではなく、自分でプランニングして出かける旅ですね。

小林:そうです。今日は何をしようかとか、どこに行こうかとか全く知らない地のことを学びリサーチしてプランニングする。その土地を知って、その土地の人達と交流して・・。簡単そうでも、これは意外と難しいんです。

北本:確かにそうかもしれません。海外となると尚のことそうでしょうね。

小林:旅が教育になるというのは自分が旅を通して実感していたことでした。

北本:その旅教育をいま事業として踏み込もうとしたことは何か理由があるんですか?

小林:はい。きっかけは瀬戸内海にある讃岐広島という島との出会いです。
初めてその島に行った時、とても美しい島だなと思いました。原風景がとても素晴らしかったんです。そこで出会った人たちもとても温かくて。でもその島は過疎化・高齢化が進んでいる島でした。課題をたくさん抱えていたんです。
その島の課題解決に何かしたいと思って、島の人達と一緒にゲストハウスを立ちあげたんです。それが振り返れば「旅教育プロジェクト」の大きなきっかけのひとつです。

北本:ゲストハウス「ひるねこ」ですよね。私も家族で行ったことがあります。

小林:そうです。そのゲストハウスを作った時、兄の子ども達や友人の子ども達も連れて行きました。みんなで看板を作ったり、その島の自然に触れたり、島の歴史を現地の人に話してもらったり、とても良い体験になりました。
目に見えて子ども達の成長を感じました。

北本:島の人たちと島外の子ども達、小林さんも含め、みんなで「ひるねこ」を作ったんですよね。

小林:そうです。島の人たちとの交流や心の触れ合いも、都会にいる子ども達にはとても新鮮な体験だったと思います。

北本:私も「ひるねこ」で子ども達の成長をまじまじと感じました。そして私自身も。心が洗われるってこういうことなのかなって。美しい原風景と、優しく温かい島の人達、島にいる猫も本当に可愛くて・・なによりも「ひるねこ」の家のあの温かな雰囲気がとても癒されました。
自分の家じゃないのに居るだけで癒されるんです。

小林:テレビもないし、ゲームもないし、遊べるところも本当に何もないんだけど、でも大切なものが全てそこにあるんですよね。

北本:はい、「何もない」けど「何でもある」ような。

小林:そうです。その中ですることを見つけて、島のこともたくさん知って、島の良さを子ども達が気付いてくれることに旅の意義を感じました。
この素敵な島にまた子ども達が来てくれて何かを学んでくれたらいいなと思いました。

北本:その「ひるねこ」を立ち上げることが旅教育プロジェクトのベースになったんですね。

小林:はい、でも教育という側面だけじゃないんです。
過疎化が進んで、島はいま高齢化している現実があります。この島に住む人はもちろん、旅で訪れる人も少ないのが現状です。ゆくゆくは無人島になってしまうかもしれない。
島に子ども達が来てくれたらきっと島のお年寄り達も新たな生きがいを見出してくれると思いました。
しかも、島に残る貴重なモノ、コト、伝統、文化を、旅教育を通じて子ども達に知ってもらうことでそれらの継続を図ることもできます。
旅教育によって島で雇用もきっと生まれる。

北本:子ども達が様々な力を育む旅教育が、そのまま島を再興することにもつながりますね。

小林:そうなんです。私達ひるねこ旅教育プロジェクトはこの子ども達目線と島目線の2つの目的達成のために動いています。

北本:具体的に、小林さん達が提供する旅教育ではどんなことをするんですか?

小林:はい、私たちが提供する旅教育は、子ども達が島旅を【計画・実行・ミッションをこなす・発表】という流れで組まれています。

北本:なるほど、子ども達に最初からプランニングさせるんですね。

小林:そうです。まずはどの島に行きたいかを選んでもらう。これは今のところ「讃岐広島」と「手島」と「小手島」のいずれかになります。そこで何をするのかも選んでもらいます。何ができるかは予めリスト化されているのでそれを参考に。

北本:旅をカスタマイズしていくようで面白いですね。

小林:年齢によっては自分達で予算を組むことも、宿に予約を入れることもチャレンジしてもらおうと思っています。

北本:我が家もホームスクールで旅をしたときは自分で予算の中から交通費も調べて交通手段を決め、宿も決めてもらいました。それは子ども達にとっても、とてもいい体験になったようです。

小林:事前に全て準備されたツアーやキャンプへの参加ではなくて子どもが主体的に計画した旅であることが旅教育の大前提です。
大人が決めた旅ではなく、子ども達が企画するということで家族間のコミュニケーション機会が増えることも期待できます。

北本:大人は「うちの子どもにはまだ難しいだろう」と思ってしまいがちですが、意外と頑張れるんですよね。
旅教育の過程の中に「ミッション」というものがありましたが、これは何ですか?

小林:ミッションは、ミッション1と2を用意しています。
ミッション1は、島の中で「つくる・とる・かく」のいずれかを実行してもらうことです。
ミッション2は「島が無人島にならないためにどうしたらいいか」を滞在中に子ども達に考えてもらいます。
島の過疎化は私達日本人にはとても深刻な問題でもあるんです。そんな現実も目の前にして、考えてもらえたらと思います。社会的な活動をしている意識が生まれるので。

北本:確かに島の無人島化は大人も考えなければならない問題ですね。
10年後や20年後にはもっと深刻化するでしょう。いまの子ども達がそういう問題を知り主体的に取り組むことは本当に大切なことだと感じます。

小林:まだこの旅教育プロジェクトは、構想段階でいま実現化に向けて頑張っています。島の方たちと先日お話してきて「ぜひやろう!」と承諾をもらってきました。

北本:ゲストハウス「ひるねこ」の立ち上げを通じて島の人たちと信頼関係を築いてきたからこそですね。

小林:そうですね。きっと私だからこそ、このプロジェクトをやる意義があるのだと思って頑張ります。

北本:お話を聞いて、旅教育の可能性を感じずにはいられません。
ぜひ小林さんの旅教育プロジェクトで我が家も旅教育をさせてください。讃岐広島しか行ったことがないので、手島や小手島にも行ってみたいです。

小林:本当に素敵な島なのでぜひ!
このプロジェクトのメリットは365日、いつでも実行できるところにもあります。
ホームスールのご家庭は平日に動けることが多いと思いますのでトップシーズンを避けて旅が出来ますよ。

北本:きっとホームスクールのご家庭ではとても興味を持つ方も多いと思います。今後も旅教育にチャレンジしていく家庭が広がってofficeひるねこの旅教育プロジェクトがどんどん素敵なものになっていくことを楽しみにしています!


参考動画)YouTube「小林希が出会った瀬戸内海の小さな秘島へ」

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