コロナが変えた学習の選択肢:ホームスクールはどのように広がるか。

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コロナが口火を切った:教育の変換期

2019年に始まった新型コロナウイルスの拡大を受け、リモートワークやオンライン学習などが興味を集めています。世界中で今までの「あたりまえ」が覆り、人々は集団での活動やライフスタイルに対しても日々見直しを行っています。教育分野においてもその考え方のパラダイムシフトは顕著です。

パラダイムシフトとは、その時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化することをいう。パラダイムチェンジともいう。— Wikipedia

病気や個人的な希望による「不登校」ではない、能動的家庭学習者である「ホームスクーリング」の動きが各国で目立っています。日本国内では、まだホームスクールという言葉が知られてまもないですが、当NPO法人日本ホームスクール支援協会にも「どうやったらホームスクーリングができるか?」などの問い合わせが日々増えており、ホームスクーリングの勢いはアフターコロナにおいても広まっていくことが予想されます。

子どもや保護者の学習に対する価値観が変化すれば、当然、公教育の体制・アプローチの変化や教材に対するニーズも変化していき、今後のホームスクールの拡大は国内においても目が離せない重要なキーワードとなってくるでしょう。

急増するホームスクーラーの裏舞台

コロナパンデミック以来、アメリカ国内では、260万人の子どもがホームスクールに転向し、ホームスクール人口は同国内で2倍に膨れ上がりました。現在では、全世帯の11%ほどがホームスクールを行っています。(参考URL

もともと、オンラインスクーリング産業が盛んなアメリカですので、通信教育業界の後押しもあり、公教育から自宅学習へのシフトが日本と比べ簡単であったこともホームスクールの拡大を担った大きな要因だといえるでしょう。

また、ホームスクーラーの親など、同じ思想を持った大人たちが子どものために運営する「チャータースクール」への入学志願者も急増しているそうです。多くがインターネット上にコミュニティを作る形で、ホームスクーラーの日々の学習のケアや子どもの学習支援を協力して行っています。

今後ホームスクールという言葉が広がっていくにあたっては、徐々に「国内版の仮想チャータースクール」ができていくことも想像に難くありません。

現に、オンラインで学習のサポートを行い、週末に運動やお出かけイベントなど、リアルな活動を行うグループもちらほら見かけるようになりました。それらの多くが、いまだ「不登校支援」の枠組みですが、N中や明蓬館高等学校などはもちろん、一部のフリースクールにおいては「不登校を学校教育機関と連携して行う」など公教育の拡張としてのホームスクーリング支援など新しい取り組みも増えてきています。

公教育からの完全なる離脱ではなく、自立できるところは自立し、受けられるサポートは受ける、といったハイブリットな学校教育機関の利用・共存が国内ホームスクーリングのスタンダードになっていくでしょう。

ホームスクールはなぜレアだったのか?

ホームスクールはかつては非常にまれでした。先進国といわれるアメリカにおいても1993年まで50州すべてで合法化されていませんでした。その理由の一つが公的な教育プログラムよりも劣っているという認識が強かったこと、そしてもう一つが伝統主義ともいえる、公教育機関は受けるべきという社会的圧力であったように思います。

しかし、パンデミック以降、私たちの考えは大きく変わりました。公教育と同等かそれ以上のものが、家庭でもオンライン経由で享受できることに気づき始めたのです。さらには、オンライン教育の柔軟性や子どもたちの個性に合わせた学習に利益を見出してさえきています。学校に登校せずとも、たくましく学習を進める子どもたちとそれを実現する先生たちの状況を見て「毎日いかなくてはいけない」という神話も崩れてきています。

アメリカ事例から見る:国内ホームスクールが越えなければいけない『壁』

一方で、受動的学習者など、学習へのモチベーションが高くない子どもたちや、エンターテイメントに囲まれすぎてしまっている学習者の親はオンライン学習に頭を抱えます。”非自発的な家庭学習者”は今後大きな社会問題となるでしょう。

このような「能動的な学習はどうしたらよいのか?」「これまでの公教育と同レベルの学習はどのように計画し、実行すればよいのか?」といった課題をうまく解決していくことが、今超えるべきホームスクールの大きな壁といえるでしょう。

言い換えれば、ホームスクールが社会的に広まり、学習の可能性を無限に広げるためには、ホームスクールの存在を認識し、それに特化した新しい基準、枠組みが必須です。

では、過去30年で、アメリカはどのようにしてホームスクールが合法化されていったのでしょうか?

結論として、アメリカ国内のホームスクール合法州においては、ホームスクールを認めるにあたり、各家庭に教育機関などの第3者機関との連携を求めています。

具体的には

  1. 毎年の学力検査
  2. ポートフォリオ(作品集・成果物の記録)の提出
  3. 活動の記録(イベントやコミュニティに所属しているならその出席記録・証明)

などの、客観的データの提出です。

規制の厳しさは州ごとに多少の差異があり、最も厳しいとされるニューヨーク州では、上記のようなデータ提出などがきちんと行われていない場合は、家庭観察にかけられ、保護者は改善計画を作成・提出しなければいけない、となっています。

発達障害や、知的障害、また家庭の困難を抱えている子どもや親が行うホームスクールについては、さらに多くの基準の設定が議論されていたり、公教育を利用しない家庭への税金の控除プログラム*が導入される州があるなど(コロラド州、バージニア州、ニューヨーク州、ニュージャージー州)、社会的にも影響のあるトピックとなっています。同様の課題が日本国内でもこれから先出てくることは明らかです。

*税金控除で得たお金で、外部プログラムや、大学の試験、専門的な技術取得が受けられる、という趣旨です。

変わりゆく教育の価値観と社会ニーズに対応する

すでに私たちの教育に関する価値観は塗り替えられてきており、日本においてもホームスクールと連携するプログラムは今後次々と出てくることでしょう。

当協会においても、協議会や有識者会議などを通し国への訴えかけ、ホームスクールの健全な合法化を目指し活動していくべきだと考えております。

皆様におかれましても、引き続き応援、サポートのほどよろしくお願いたします。

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