※本記事はホームスクーラーのためのWEBメディア:ホームスクールジャパンに2018年6月6日に掲載された記事です。
(c)Yoko Rivera & Takahiro Sasaki, Jan. 2018
ホームスクールに取り組んでいる家庭数を調べることはできるのか?
「ホームスクールぜひやってみたい!」「興味がある。」
ホームスクールの利点をお伝えすると、こう思っていただけることは少なくありません。しかし、人はだれしも社会の動向が気になるもの…。
実際、どのくらいの人がホームスクールやってるの?
「いいと思うんですけど、どのくらいいるのでしょうか?」
これは、ホームスクールを調べていくうえで最初の問いになると思います。
誰にとっても興味深い問いであり、また答えるのが難しいものでもあります。
ホームスクール先進国を見てみよう
アメリカではホームスクーリングが法的にも社会的にもきちんと話し合われています。まず、アメリカのケースでは、どうなのか見て行きましょう。
ホームスクールをしている子どもの数は特定しにくい
理由は主に二つあります。
①ホームスクーラーの多数が把握されていないこと。
ホームスクールの登録を義務付けている州は多くありません。そのような州ではホームスクールをしている子どもの数を特定することはほとんど不可能です。また、ホームスクーラーの多くは学校の干渉を避けたがるので、登録のような作業に自ら申し出ることはあまりないのが現実です。
②ホームスクーラーに関する研究が政治的および社会的に偏っている
残念なことに、ホームスクーラーの数に関するデータをめぐってはそもそもホームスクールに賛成している人たちと反対している人たちの間で、それぞれの意見に偏りがあります。
例えば、教職員組合のような団体にとってホームスクーラーの数を最小限に抑えることは政治的、また彼らの立場的に必須です。
本音を言えば、教育制度はホームスクーラーの数を正確に知られたくありません。ホームスクーラーの数が統計的に増加すれば、それは教育制度の崩壊とも取れますし、公教育の立場が危ぶまれます。
また、アメリカではもしホームスクーラーの数が特定されれば生徒の総数によって決まる学校への資金が減額されてしまう恐れがあるからです。
教育制度にとってはホームスクーラーは資金獲得の妨げとなるものとして捉えられるのです。
正確な数は推測の域を出ません、でも…
上記の理由から、ホームスクーラーの数を正確に特定することは難しいと思われます。
一方で、近年ホームスクーラーの数が継続的な増加傾向にあるという定性的かつ定量的な証拠が出てきています。
これは、私たちホームスクーラーにとっては明るい未来を示すものと言えますね!
米国ではこれまでに、幾度となくホームスクール家庭数の計測が行われてきました。そして、これらは前述のとおり、「調べる機関」によってかなりの開きがあります。
しかし、アメリカの国勢調査局の調査(The U.S. Census Bureau:Home Schooling in the United States: Trends and Characteristics by Kurt J. Bauman)によると、1999年時点で国内でホームスクールを受けている子どもたちの数は791,000人を推定されていたのに対し、今日では専門家間でも合意の取れている推定数として、およそ90万人から200万人という数字が挙げられており、差こそあれ増加傾向にあることはまず間違いなさそうです。
当然、「200万人」という数字を支持しているのは、ホームスクールに賛成派の人々、「90万人」を支持しているのは既存の教育機関をはじめとしたグループです。
また、米国のホームスクーラーであり、ホームスクールを研究されているAnn Zeise氏によれば、2017ー2018のホームスクーラーは米国内のみで1,642,027人と推定され、これは国内学生全体の2.8%に当たるそうです。
https://a2zhomeschooling.com/thoughts_opinions_home_school/numbers_homeschooled_students/
さらにうれしいニュースとして、
正確な数はさておき、ホームスクール賛成・反対両者の専門家は
ホームスクール人口はとてつもないスピードで増加していることに合意しており、
その増加率は、毎年7%~15%とされています。
– Reaching the Homeschool Market by Mark Lardas in Tdmonthly magazine, October 2003.
定量データから、ホームスクールの成長をみる
そんなことも実践されています。
まず、ホームスクールの社会的活動の総数は年々大きくなっており、教育機関への影響力も強くなっています。
最もわかりやすい例として、ホームスクール関連の書籍の出版数の増加、さらにこれを店頭販売する書店の数の増加など、ホームスクール関連のビジネスは増加しています。
また、iPadなどで有名なApple社やWord, Excel, PowerPointで知られるMicrosoft社をはじめ、学習者向けのディスカウント(割引)を行う民間企業が、その対象として明確に「ホームスクール」を明記するケースが増えています。
また、ホームスクールを支援する団体、ウェブサイト、ホームスクーリング向けの教材提供サイトの総数も劇的な増加を見せています。
そして何より、少し前まで聞いたこともなかったような「ホームスクール」という単語が、今や個人ベースでもメディアでも見聞きするようになっています。
日本では?
上記の通り、正式な数はわからない、というのが回答になります。
しかし、定量的なホームスクール関連の情報は確実に増えており、今後さらにその活動は活発化、かつ社会的な影響も強くなっていくと信じています。
ちなみに文科省資料によれば、現在の小中高の在学者数は1,330万人であることがわかります。
仮に、米国の傾向である「全体の2.8%」をこれに当てはめると、国内の潜在的ホームスクーラーは37万人程度いることが類推できます。
現在、国が正式に認めている不登校者数は、小中併せて13万5,000人。
高校の4万8,000人を入れれば、小中高のトータルは18万3,000人となります。
日本にいる18万人ちょっとの不登校に加え、もし他に選択肢がないために学校に行っている学生が18万人ちょっといるのだとしたら…。
主観ではありますが、あながち嘘ではない気がします。
今、ホームスクーラーが何人いるかは知られていません。しかし、その数は明確に増えています。それもかなりのスピードで。このトレンドは、ホームスクールの存在が知られ、メリットが理解されることでさらに加速するでしょう。
さいごに、
「不登校」という言葉は米国には存在しません。
ホームスクールが輸入されることで、社会インフラは大きく変わるのではないか。
そんなことを考えてやみません。
参考:how many homeschoolers are there? (https://www.familyeducation.com/school/homeschooling-groups/how-many-homeschoolers-are-there)