今回は、ホームスクールディスカッションでもよく話題になりがちな、「ホームスクールの種類」についてご説明します。
ホームスクールと一概に言っても本当に様々な形式が存在します。
特に日本国内においては、子どもたちの「学習」に対する保護者のスタンスを軸にいくつかのスタイルに分類することが一般的です。
国内で広く利用されているホームスクールのスタイル
ここからは、大きく3つのホームスクールのスタイルを紹介します。
学び方は各家庭で多様化しており一概にこのスタイルが全てというわけではありませんので一例としてご紹介していますことをご了承ください。
School at home(スクールアットホーム)
スクールアットホームは、その名の通り、学習環境は家庭であることを除き、学校などメインストリームの教育機関の運用に準拠する姿勢で行うホームスクールです。類似するものに「Learning at Home(ラーニングアットホーム)」という形式も存在します。
スクールアットホームは、日々の時間割を定め、教科書を使いながら、教科についても、子どもたちの興味の如何によらず、まんべんなく親が教員の代わりになって義務教育課程を担う形式です。
原則「家庭が校舎の役割」「親が教師の役割」という仕組みで行っているスタイルで、海外では物理的に学校に通うことが困難な家庭がこの形をとるケースが多いようです。
スクールアットホームのメリットは、学校のプログラムから大きく外れることがないため、集団での学習環境が苦手なお子さんや、体調の問題から時間の調整が必要なお子さんでも、自分のペースで一般的な学習を進められることが挙げられます。また、この形式では比較的学校との連携がとりやすく、教育現場からの理解が得やすいため、実践難易度の低いホームスクール形式であるといえるでしょう。
一方、この形式を進めるうえでの注意点は保護者など指導に当たる大人が一定の教育知識や指導力が求められることにあります。家庭だけで抱え込むと、ホームスクールの挫折や、子どもの教育機会の損失につながる危険性もあるため、学習面では学校を始め、塾やフリースクール、家庭教師などの外部専門機関を利用することも一案です。家庭でのホームスクールは「料理」「工作」「音楽」など子どもの興味と一緒に向き合ってあげられる時間とするなど、適材適所を心がける姿勢が重要です。
類似のラーニングアットホームとの違いは、学校教育に準拠する姿勢の強さだと考えられます。
スクールアットホームが学校教育をまんべんなく家庭で行うことを目指しているのに対し、ラーニングアットホームは家庭での学びの目的がより早期から明確であることから「できないこと」「興味の薄いもの」などに対しては時間を大きく割かずに、「得意なこと」「好きなもの」に時間を割り振る特徴があります。それ故に後者は必ずしも教科書の進度に準拠することなく、無学年の通信教材やe-learningなどを使用して学習をある種”効率的に”進めます。
Unschooling/Natural Learning(アンスクーリング/ナチュラルラーニング)
ホームスクールのアプローチの中でも特に人気が高く、注目されているのがこちらのスタイルです。アンスクーリングは子どもの興味や自主性に基づいて日々生活を行い、トップダウンで学習を進めるスタイルです。育成方針はあれど、教科書のようなステップを踏ませることを目的とした明確な「指示」がないことが最大の特徴であるといえます。
子どもたちが生まれながらにして持つ「学習意欲」「知的好奇心」を大切にすることで、日常生活や遊びの中で感じたこと、不思議に思ったことを一緒に調べ、答えや方法を導き出します。またその際に必要な学習項目もカバーします。
例えば、工作をしているときに、ものの長さに触れますね。では、センチメートルとメートルはどちらのほうが大きいのか?何センチで何メートルになるのか?実際に表記されているものを探してみたらどうか?…など、ホームスクーラーであれば必ず通るアプローチであるともいえます。
アンスクーリング(ナチュラルラーニング)では、子どもたちは、生きるなかで最も多くを学ぶという概念が根底にあるため、あえて「教える」ことをせず、子どもを自由にさせているケースが多いです。
このスタイルのメリットは、何より子どもたちが中心となった最も自然な学びの体系であるということでしょう。子どもたちが不思議に思ったタイミングというのは、知的好奇心≒学ぶ姿勢が最も高まっている瞬間です。この瞬間を見逃さず、適切な教育を与えることができれば、無理に学習を強いる勉強よりも学習効果が高くなることは当然であるといえます。
一方、デメリットとしてはその実施難易度があげられます。大人のハードルとしては、子どもの興味を見逃さず、適切に環境を整えるスキルが求められることはもちろん、明確な学習プランの設定を行わないことから、学校/社会からの理解が得にくい現状があります。悲しいことに、「アンスクーリング」を謳った「子どもの放置」の事例もあり、社会からは教育放棄(ネグレクト)として見られるリスクもあるため、現在の日本ではかなり高難易度のホームスクールのスタイルであると思います。
子どもたちは、大人よりも情報へのアクセスが限られています。そのため、アンスクーリングでは、大人から積極的に情報や体験の機会提供をしてあげることが重要であると考えます。能動的に情報を取りに行ける研究肌のお子さんや、インターネットリテラシーの高いご家庭、行動力の高いご家庭に特に向いている形式です。他者から理解を得るための高いコミュニケーション力も求められることから、難易度が高いスタイルであるといえます。
Relax/Eclectic Homeschooling(リラックス/エクレクティックホームスクール)
アカデミック型である「スクールアットホーム」と、自由度の高い「アンスクーリング」のハイブリット型スタイルで、アンスクーリングほど子どもに委ねず、スクールアットホームよりもカリキュラムやスケジュールを持たないものです。
双方の利点を兼ねそろえ、子どもの特性や成長に合わせてその比重(バランス)を調整します。
現在のホームスクールではこのスタイルが最も一般化しており、小学校低学年など、基礎学力が未発達で「学び方」がまだ定着していない子どもに対しては、ガイドラインのしっかりとしているアカデミック寄りのアプローチが親子ともに最も負担が少なく、学校からの理解も得やすい特徴があります。
日々のホームスクーリングを続け、徐々に自学の姿勢や興味の芽生えが起こり始めたタイミングで、1日の活動に「アンスクーリング」要素ともいえる自由度を加えることで、興味のあることに没頭する時間を生み、親はその興味を見守り環境を整える、などのシフトが考えられます。
当協会としても、両方の特性を兼ね備えられるこの方法が日本社会のニーズに合致しているものであると考え、おすすめしています。
それ以外のホームスクールスタイル用語
ここからは、補足として以下2つのホームスクールに関連する用語を紹介します
Hack schooling(ハックスクーリング)
徹底した“個”を尊重する教育といわれ、当時13歳のローガン・ラプラント氏がTEDで提唱し話題になった子ども本人が自身の教育を自身でハッキングしていく学び方です。アンスクーリングを実践する過程の中でも、特に自学能力の高い子どもたちが行っているような形態とも言えます。
世界のあらゆる大学の講義もネットで受けられる時代であることから、学年や年齢はもちろん、AIによって言語の壁なども簡単に乗り越える(ハックする)ことができます。これからはこのような学び方を選択する子どもも増えていくのかもしれないですね。
Umbrella school(アンブレラスクール/カバースクール)
アメリカを中心に増えている、ホームスクール家庭による組織の形式をさし、雨に濡れないようにさす「傘」のようにホームスクール家庭を国などの機関から擁護することを目的としています。
具体的には、ホームスクーラー達が地域ごとに設定された要件を満たすために、教育団体を設立し、各家庭の教育を監督する形式が始まりであるとされ、アンブレラスクールの典型的な役割としては以下があげられます。
1)各家庭のホームスクールプログラムに法的正当性を与える。(カリキュラムの監査、確認)
2)成績表の発行
3)出席記録をとる
4)遠足やクラブ活動、読書コンテストなどのイベントを実施する。
5)学生IDを発行する
日本でも一定の基準を第三者評価できる機関が、公教育との関係性に悩むホームスクーラー達の救いになると考え、HoSAでは、アンブレラスクールとしての「ゴーストスクール」を設立、運営しています。